こんにちは。男性向けジャムウショップ「エムズジャムウマーケット」の不思議店長です。
バリ島の伝統舞踊、今日は一番有名なケチャダンスについてお話をします。

ケチャダンスとは、数十人の男性コーラスが発する「チャチャチャ・・・」というリズムに乗せて「ラーマヤナ」というインドの叙事詩の一部を演じる舞踊劇で、上半身裸の男性コーラスが特徴的です。
このダンスは、世界中に紹介され「バリ舞踊=ケチャダンス」と言われるほど有名なダンスです。

ケチャダンス

バリ島で一番有名な舞踊ケチャダンス、さぞや伝統・歴史もあるかとお思いでしょうが、実はこのダンスは伝統舞踊でも民族舞踊でもなんでもないのです。このダンスが1920年代から30年代にかけてバリ島ウブドに滞在し「バリ島美術の父」と言われたドイツ人画家ウォルター・シュピーツの発案によって観光用に生まれたダンスです。もちろん、ベースとなったのは「サンヒャン」と呼ばれる古くから伝わるダンスですが、「ラーマヤナ物語」を取り入れたり、男性コーラスの声だけで踊るスタイルなどは、このシュピーツの発案と言われています。

しかし、シュピーツら西洋文化人がヨーロッパにバリ島文化を紹介する中で、このケチャダンスはヨーロッパを中心に世界中に知れ渡り、バリ島観光発展の一翼を担うようになりました。

さて、このケチャダンスですが、インドに古くから伝わる叙事詩「ラーマヤナ物語」の一部が演じられています。

ケチャダンス

この「ラーマヤナ物語」は大変長い物語ですが、ケチャダンスで演じられている部分のストーリーをご紹介します。

この物語はアヨディア王国の王位継承権をめぐり継母の策略でお城を追い出されたラーマ王子とその妻シータ姫のお話です。

ラーマ王子は妻シータ姫と弟ラクスマナの3人で森の中の小さな家に住んでいました。

ある日、森の中をシータ姫が散歩をしていると、黄金色に光る美しい鹿を見つけました。その美しさに心ひかれたシータ姫はその鹿を自分の物にしたいと夫ラーマ王子に捕まえてくるようにお願いしました。
シータ姫を残して森に入るのに不安を感じたラーマ王子ですが、姫の頼みを断りきれず、弟のラクスマナに姫の事を頼んで森に鹿を追って入りました。

鹿を追って森に入ったラーマ王子ですが、森の奥でやっと黄金の鹿を矢で撃つことができました。しかし、黄金の鹿は魔物に姿を変え、ラーマ王子の声で「助けてくれー」と叫びました。
その、魔物の声を聞いたシータ姫はラーマ王子のピンチと思い、ラクスマナに森に入るように頼みました。
ラクスマナは姫を守るため地面に円陣を書き、姫に決して円陣から出ないように申しつけ、ラーマ王子の後を追って森に入りました。

この様子を物陰からじっと見ていた、大魔王ラワナは、一人になった姫を我が物にしようと、姫に近づきました。実は、黄金の鹿は姫をさらうためのラワナの策略だったのです。
姫に近づいたラワナですが、ラクスマナの円陣により、姫に触ることができません。そこで、年老いた僧侶に化け、姫を円陣から出てくるように仕向けました。年老いた僧侶を信じた姫が円陣から出ると、大魔王ラワナは正体を現し、シータ姫を抱え自国の城に飛び帰りました。

森から帰ってきた、ラーマ王子とラクスマナは、姫がさらわれた事を知り、森の仲間に助けを求めました。
森のサルの将軍ハヌマンは、海を飛び越え、魔王ラワナの国アレンカ王国の城に幽閉されているシータ姫を見つけました。シータ姫にラーマ王子から預かってきた指輪を見せ、ラーマ王子が救いに来ることを告げると、シータ姫はハヌマンに金色の髪飾りを託しました。

ハヌマンが持ち帰った髪飾りを見たラーマ王子たちはシータ姫を救うために、猿神スグリワや森の仲間たちと、アレンカ王国に向かいました。途中ラワナの手下に襲われたりしましたが、森の仲間たちの助けを得たラーマ王子は、ラワナを倒し無事シータ姫を取り戻しました。

めでたしめでたし・・・

ケチャダンスは、このような物語です。
インドの物語ですから、日本の方にはなじみはありませんが、ダンス会場では日本語や英語で書かれた解説書がありますから、内容を知らなくても歌劇を楽しむことができます。