精力剤としても注目されている冬虫夏草
冬は虫の姿で夏になると草になると言われている不思議な薬草「冬虫夏草」は、古くから不老不死の妙薬として珍重されてきました。
免疫力を高め、壊れた細胞を修復する力もあり、強壮作用や抗ガン作用も期待されるこの薬草ですが、近年精力剤としての力も注目されてきました。
冬虫夏草は蛾の幼虫に寄生した菌です
冬虫夏草(Cordyceps sinensis)はバッカクキン科冬虫夏草属に属する菌類の一種で和名はシネンシス・トウチュウカソウといい、チベット高原など海抜3,000~4,000mの高原地帯の草原の地中に暮らす大型のコウモリガ(蝙蝠蛾・Hepialus Armoricanus)の幼虫に寄生します。
コウモリガは、夏に地面に産卵し約一ヶ月で孵化をします。
孵化した幼虫は土の中に潜り込みますが、この時、冬虫夏草の真菌に感染すると幼虫の体内で菌がゆっくりと成長します。
幼虫の中で成長した菌は春になると幼虫を養分として菌糸が成長し地面に出てきます。
地中部は、幼虫の外観を保っており、幼虫から菌糸が伸びているので、古くからチベットでは「冬は虫の姿をしており夏になると草になる」と考えられ、そこから「冬虫夏草」という名前がつきました。
自然界には、チベットに生息するコウモリガに寄生するシネンシス・トウチュウカソウ以外にも虫や幼虫に寄生して宿主を栄養として成長する菌はたくさんあります。
そのため、冬虫夏草と言われる菌は300~400種類あると言われていますが、強壮作用や抗ガン作用がしっかり確認されているのは、このコウモリガに寄生するシネンシス・トウチュウカソウだけと言われています。
この冬虫夏草は採取量が大変少なく清の時代には皇帝と一部高官しか食べることができなかったと言われるくらい貴重品です。
現在でも、生産地で5~20万円/Kg,市場では60~100万円/Kgで取引されています。
そのため、偽物や他の幼虫に寄生させた菌を冬虫夏草として売ったり、重さを増やすために金属粉を混ぜたりといった悪質なケースも見受けられるそうです。
冬虫夏草の成分
冬虫夏草は中国でしか手に入らず、採取量も少ないため、成分の分析や効果の研究は主に中国の医療機関や大学、研究所で行われています。
成分としては、亜鉛、セレン等ミネラル類や天然アミノ酸、タンパク質を豊富に含み、特にβグルカン(多糖体)は、一般のキノコの170倍含むと言われています。
また、「奇跡のホルモン」と言われる「メラトニン」も多量に含まれています。
メラトニン(melatonin)とは、動物、植物、微生物に見られる化合物で、動物では脳の松果腺から分泌されるホルモンの一種です。
このメラトニンには強力な抗酸化作用があり、免疫力を増強し、発がんを抑える力があるとも言われています。
また、催眠作用もあるので不眠治療や時差ぼけの解消にも使われています。
冬虫夏草の利用法
古くから中国では冬虫夏草は不老不死の妙薬として、虫の形を残した宿主付けた形で採取、乾燥させ、漢方の生薬や薬膳の食材に利用してきました。
ただし、冬虫夏草は煮戻しても柔らかくならず、味も感じられないので、これだけで食する事は少なくネギ、ショウガ、紹興酒、スッポン、アワビなどと共に煮込んだりする料理に使われます。
また、生薬としても強壮作用や抗ガン作用があると言われ、薬種の材料やエキスを抽出し健康食品やサプリメントなどに利用されています。
冬虫夏草の効能
このように豊富な栄養素を含んだ冬虫夏草ですが、効能として、強壮作用、スタミナ補給、運動能力の向上が言われており、1993年の世界陸上選手権で驚異的な活躍を見せた中国女子陸上チーム「馬軍団」がこの冬虫夏草のスタミナドリンクを飲んでいた事が報道され、世界的に有名になりました。
また、肺と腎を強めると言われており、肺気腫や喘息にも良いとされています。
抗酸化作用や免疫力を高める作用から、アトピー性皮膚炎や糖尿病、生活習慣病の治療薬としての研究もされているそうです。
最近では、精力剤としても注目を集めています。
特に効果の表れが早いと言われており、1999年には日本のスポーツ紙に「冬虫夏草に精力剤としての効果あり」と紹介され、その精力剤としての効果を解説した本も多数出版されたそうです。